back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2016.09.12リリース

第二百四十八回 <築地市場>
 戦時中都内の部隊の主計をやっていて、時に朝早く炊事兵と一緒にトラックに乗って魚などの買い出しに行ったことのある私は、築地と聞くと何となく懐かしい思いがする。
 二千人の部隊の毎日食べる魚の量はトラックに一ぱいになるくらいであった。
 買い付けが終って場内のすし屋でつまむ鮨のおいしかったこと。鮪の中落ちの本当に新鮮な握りの味は忘れらない。
 朝の市場は活気がある。あの一種独特のセリの声。よくもまあ間違えないで売買が進められるものだなと思う。
 その築地の市場の移動問題が前から大問題となっていたが、豊洲への移転と決定し、もう巨額の予算も注ぎ込まれて、準備は進行している。
 ところで、新市長小池氏から「待った」がかかって、又、大騒ぎとなっている。
 私は、新聞からぐらいの知識しかないので、自分ながら確たる意見は言い難いが、まず散々議論の参句議会でも決定したことを今更ひっくり返すのは如何がか、という気がする。
 私は、直接の市場参加業者よりも、ひょっとしたら、あの市場を中心として形づくられている広い意味の市場の利害も混乱の大きな原因ではないか、と思っている。
 市場で買われた品物は直接の需要者まで、何段階の取引きを経て屆くわけだが、それらの否は、市場の直接のメンバーではないから、移転についてワイワイ発言はしても、何等本当の権限はないし、又、移転に伴なう損害があっても補償を表向き要求できる立場ではない。いわば、自分達が勝手に商売している形なので、異見は言えても、最後までつっぱる力もないし、理由も乏しい。
 場内に関しても、店の割り当て面積が狭くなって困るとか、あれこれ反対理由も読んだが、そんなことは前からわかっていたことではないか。
 それに、あまり新聞などにも書かれていないが、第一、あゝいう形の市場の取扱い量の割合いがだんだん減って来ているし、又、これからもそうなって行きそうなことも問題ではないか。
 市場を通さない取引き(洋上やら大手需要者との相対取引き)の増加などなど。
 も少し実態をよく調べるべきで、私の乏しい知識での想定に過ぎないかも知れないが。
 それにも一つ、日本の少子化現象の影響である。今は少子化であるが、そのうち、皆大人になる。その大人の数が減ってくれば、少子化に拍車がかかる。困った大問題である。
 私は、前から少子化現象こそが日本の発展を妨げる最大の障碍ではないか、と言い続けて来ている。
 インド初め人口の拡張している国も大いし、中国も一人っ子政策を改めているようだし、米国も白人系は人口増加が低いようだし。
 何と言っても人口は大きな力であることは明らかである。
 日本の人口は、このまゝ行けば三〇〇年後に四〇〇万人ぐらいになって了うという。横浜市一市の人口に毛が生えてくるような数はなったら、日本は一体どうなるんだろうかと思う。もう私等はとっくの昔になくなっているから、そんなことを考えても何にもならないぢゃないか、と言われれば、それはその通りだが、余りにも淋しい話ではないか。
 
 


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