back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2016.03.24リリース

第二百三十七回 <郵政、逆風下の社長交代>
 日本郵政社長の西室泰三氏が三月末で退任、四月からゆうちょ銀行社長の長門正貞が後任にきまった、という報道である。
 私は、以前にもこの欄で述べたが、昭和二十四年九月、出向で来ていた前任者が人事の都合上急遽運輸省に戻ったので、その後任として赴任して半年目の京都下京税務署長から大蔵省主計局の逓信係の主査に任じられたのである。
 「東京に家なく、家内病気、一週間赴任の延期を乞う」という六無斉のような電報を打ったのを今でも覚えている。
 その年の四月、戦前からの逓信省が郵政省と電気通信省に分割されたのは、全官公の中でも強力な全逓労組の分断を当時のGHQが命令したことによると言われていた。その後、郵政省、電気通信省、大蔵省の専売局はいわゆる三公社となったのである。
 それから小泉首相が推し進めた郵政民営化で、日本郵政公社は衣替えをして郵便、物流、貯金、生命保険を主要事業として分社化することになった。
 政府は、株式の九割をもっているが、段階的に手放して三分の一超まで下げることになっている。
 現在、グループの利益の大半を稼ぐゆうちょ銀行は日銀のマイナス金利政策が逆風となり、主要な運用先である国債は利回りが急低下、規制で事業向けの貸し出しはできず、外国債券など海外にも投資先を拡げて、利益の減少を食い止めようとしているが、日本郵政の経営はなかなか厳しい問題を抱えている。
 前にも述べたが、私は、いわゆる郵政民営化は、どういう目的なのか、どういう利点を持つものなのか、など、よくわからない点があるので反対であることを表明していた。
 全国二万四千局もある特定局を含む日本郵政の出先は分社化によって、従前のようにお互いに助け合って仕事をすることもならず、不便であり、利用者もまごつくことが多いとか何かと不自由が目立つばかりでなく、新規に地域密着型の事業に手を伸ばそうとしても障碍があるという。もっと事態をはっきりと把握しないで物を言うのは適当ではないと思うが、一体何で、いわゆる民営化を急いだのだろうか、という疑問は、相変わらず解けないでいる。
 私は、これは終局的にはいわゆる財政投融資制度の弱体化を狙って行なわれたのではないか、という憶測を消せないでいる。勿論バックは民間銀行のジェラシイではないか。
 然し、見よである。いざ東日本のような災害や外国への投資に際しても、民間の銀行だけでは思うように動けない、いや、動かないではないか。せめて、郵政に企業向けの貸出しでも認めたらいいと思うが、これも今のところ出来ない。
 又、ゆうちょとかかんぽは民営はいいとしても、現に預金の額、契約の額についてはっきり限度がまだ残されたまゝである。一般の人にとっては、ゆうびん局は信用できるし、又利用し易いのである。政府はそう民間の銀行に色目を使うこともないのではないか。
 今となっては、後もどりも難しいというのであれば、せめて、ゆうちょやかんぽの手足のしばりを緩め、限度額を高くし、又、経営主体を又一体化したらどうなのか。
 郵政事業に関しては、信用の秘密の問題もあって、民営化している国は少ない、と聞いている。
 以上、思いつくまゝに書いて並べたが、もう少し、実態についてもよく調べて見たい。
 
 


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