back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2016.03.10リリース

第二百三十三回 <仮想通貨>
 私は、かねて仮想通貨(ビットコインなどインターネット上で使われる仮想通貨)がマスコミに採り上げらるようになった頃から、これは今後さらに拡大して使われるようになり、金融界でも問題になって来る可能性が高いように思うので、今のうちに政府でも取り扱いを検討しておく必要があると思った。金融庁方面にも意向を述べると同時に、取り扱うとしたら金融庁が妥当である旨を伝えておいた。
 仮想通貨は果たしてしぼむどころか、ますます拡がって行く気配なので政府は事実上の通貨として規制することとし、事実上の通貨として機能を持っていると認めた上で、テロや犯罪組織による悪用の防止や、問題業者の排除を図るために来春にも法律を実施することになったようである。
 今月五日の各紙に記事が載せられているが、ここでは、「日経、朝日、読売」の三紙の記事を転載することにした。
 
  『日経新聞』
 「仮想通貨の透明性向上 法案閣議決定」、「貨幣」と認める 破綻時やテロ対策が課題
 政府は4日、仮想通貨取引の透明性を向上させる法規制案を閣議決定した。ビットコインなどの仮想通貨は「貨幣の機能」を持つとして、公的な決済手段の一つであると位置づけた。取引所には外部監査や最低資本金を義務付けることで、利用者の保護も図る。ただ破綻時の対応やテロ資金対策など依然として課題も残る。
 政府は今通常国会で資金決済法を改正する方針だ。現在は仮想通貨をカバーする法律はなく、単なる「モノ」としかみなされていない。
 2014年にビットコインの取引所「マウントゴックス」が経営破綻し、一時は安全性などに懸念が高まったが、取引量は再び増えている。日本には現在、7社の取引所があり、約5万人がビットコインを利用するとされる。取引量は1日あたり約6億円で、直近3カ月では3倍に増えた。
 国内でビットコインを決済できる店舗も千店を突破した。飲食店だけでなく、歯医者やネイルサロンにも広がっている。
 仮想通貨は急速に普及しており、取引の安全性を高めることなどが焦点になっている。特に消費者保護などが重要な課題になっており、金融庁も一定の規制が必要だと判断した。
 マウントゴックスの例では破産手続き時に顧客から預かっていた82億円が消滅した。中小企業の運営が多い取引所に破綻に備えた資金を積ませるルールはなく、預金保険法で資産が守られる銀行などとは違う。
 金融庁幹部は「今は外部監査や顧客と自己資産をわける『分別管理』を導入している取引所は一部しかない」と明かす。実際、昨年に仮想通貨の取引が突然停止した取引所もあった。
 今回は取引所を金融庁の監視下に置き、外部の公認会計士による監査や1000万円以上の最低資本金を導入する方向。毎年の財務報告書も必要となり、経営余力がない取引所は自然と淘汰される。顧客と自己資産をわける「分別管理」も義務づける。利用者に手数料や契約内容の情報開示も課す。
 利用者保護に関する最低限のルールができるが、依然として安全性には課題がある。金融法制に詳しい遠藤元一弁護士は「仮想通貨は価格の変動が激しく、投機性が強い。財政基盤が弱い取引所が多く、仮に破綻した場合は債権者の資産を保護するのは難しい」と話す。
 麻生太郎金融相は4日の閣議後会見で仮想通貨について「テロ資金に利用されているとの指摘もある」と言及。匿名性が強い仮想通貨はテロ資金流用への疑念がなお晴れない。仮想通貨は金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」の発展で新しい利用手段が注目されるが、依然として本物の通貨に比べて課題が多い。
 
  『朝日新聞』
 政府は4日、ビットコインなどの仮想通貨を扱う交換業者を規制する資金決済法の改正案を国会に提出した。仮想通貨への法規制は初めて。規制にあたって、仮想通貨を、通貨(お金)ではなく「財産的価値」と位置づけ、電子的な決済手段のうち、既存の法律で規制されていないものを仮想通貨と呼ぶことにした。
 先払いの電子マネーなどは資金決済法、後払いのクレジットカードなどは割賦販売法ですでに規制されている。買い物でもらえるポイントやマイル、ネットゲームのコインなど、特定の範囲内でしか流通しないものも仮想通貨に含めない。
 
 改正案では、仮想通貨の位置づけを定めたうえで、仮想通貨と現金を交換する業者を登録制とし、金融庁が監督する。利用者が口座を開設する際は本人確認書類の提出などが必要になるほか、2年前に起きたビットコイン取引所「マウント・ゴックス」の経営破綻(はたん)を踏まえ、業者による着服を防ぐため、利用者と業者の仮想通貨を別々に管理することも求める。
 仮想通貨は形熊や規模がさまざまで、専門家の間でも法的な位置づけは固まっていない。ただ、国際的なテロ資金の移動に使われているとの見方があり、テロ対策が大きなテーマになるとみられる5月の伊勢志摩サミットの前に、法規制を急ぐ必要があった。
 仮想通貨が「お金ではない」と位置づけられたことで、今後は民法など他の法律でどう違うかが課題になる。金融庁によると、現行の法制度では、仮想通貨の持ち主には所有権が認められないという。例えば業者が破産した際に、仮想通貨は業者の財産として扱われ、使用者に戻ってこない可能性がある。
 政府は、地銀同士が経営統合しやすいよう持ち株会社に業務を集約できるようにしたり、ITを活用した新たな金融サービス「フィンテック」に対応するために銀行がIT企業などを買収できるようにしたりする銀行法などの改正案もまとめて提出した。
 
  『読売新聞』
 ビットコイン実質「通貨」 法案決定 問題業者は行政処分
 政府は4日、ビットコインなどインターネット上で使われている仮想通貨を規制する関連法改正案を閣議決定し、国会に提出した。
 事実上の通貨としての機能を持っていると認めたうえで、テロ・犯罪組織による悪用の防止や、問題業者の排除により利用者保護を図る。
 各国でも規制が進んでいるため、麻生金融相は4日の閣議後の記者会見で、5月の伊勢志摩サミットまでの法案成立を目指す考えを示した。早ければ来年春にも施行される。
 資金決済法や銀行法などを改正する。現金と仮想通貨の交換や売買を行う交換所(取引所)に登録制を導入し、利用者の本人確認や取引記録の保存、不審取引の通報などの義務を課す。
 交換所の運営業者には、客から預かった資産と会社資産を分別して管理するなど、顧客保護の取り組みも義務化する。金融庁には、業者を検査し、業務改善命令などの行政処分を行う権限を与える。
 仮想通貨は、「貨幣」や「紙幣」など法的に定めた「通貨」にはあたらないと定義し、不特定多数が売買したり支払い手段として利用したりするなど、事実上の通貨としての機能を持っているものと定めた。
 電子マネーや地域通貨は、不特定多数が自由に売買できないため、仮想通貨にはあたらない。
 仮想通貨は、海外送金手数料の安さなどが支持されて利用が広がっている。だが、金融庁などが厳しく監督してきた既存の金融機関を通さず使えるため、テロ組織などが犯罪などに悪用しても、捜査当局が資金の流れを追って摘発することが難しかった。
 
 


戻る