back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2016.01.08リリース

第二百二十八回 <慰安婦問題>
 長いこと日韓の間の融け難い問題として存在し続けた慰安婦の問題は、安倍総理の決断によって、ソウルの日本大使館前にある「少女像」の移転を条件として韓国が設立する財団に十億円を拠出することで両国の合意が成立したと伝えられている。少女像は元慰安婦の団体「韓国挺身隊問題対策協議会」が設置したもので、韓国外相は記者会見で「少女像の移転については、関係団体と話し合いを行い、適切な形で解決するよう努力する」と明言しているが、最終的にそこに結着するには韓国は半端な汗ではすまないと見られている。
 そもそも慰安婦の問題が日韓間の条約で凡ての問題が解決され、有償、無償の賠償も決定されたにもかかわらず、いつまでもくすぶっているのは、慰安婦の団体など韓国側の民間団体を中心とする運動があった外に日本側にもこれを支持するような言動が見られたからで、日本政府は終始解決済みの問題として採り上げて来なかったのである。
 従軍慰安婦と呼ばれるような存在はなかったことは、支那の派遣軍の司令部に主計将校として二年近く勤務していた私が、以前この「地声寸言」でも述べたように明らかであった。当時は、日本内地でも公娼、私娼の存在が公然と認められており、業者が駐屯軍の行く先に慰安所のような施設を作っていたことは明らかではあるが、いずれも業者が商売として行っているものであって、決して、軍が婦女子を強制連行して売春を行わしめていたようなものではなかった。
 もっとも、軍は、性に飢えた兵隊が現地の婦女子に性的暴行を加えないように業者の存在を黙認し、又、性病などが伝染しないように、適宜軍医に検査させ、又業者が暴利を貪らないように料金の限度を決めていたり、券の発行を認めたりしている程度に関与したと言えば関与していたが、凡そ従軍看護婦のような公的存在ではなかったことは明らかである。
 日韓賠償交渉で片付いていた筈の問題をいつまで蒸し返すのか、われわれも大変不満であって、さらなる賠償的行動を断固として拒否して来た政府の態度を支持するものであった。
 しかし、昔から泣くこと地頭という言葉があるように、理屈が外れていても、適宜妥協しなければならないことも世の中にはある。という態度で、この問題の妥協案を認めるしかないと思っている。
 ただ、同じような慰安婦の問題は韓国人以外にも、又韓国以外にもあったことは明らかであるが、それらについては別に問題となっていないので、寝た子を起こす必要はないと思っている。
 もっとも、終戦後、満州、樺太、北鮮、千島などで日本人婦女子の多くが性的暴行を受けたこと、又、米国軍が日本に進駐して来た時、婦女子の差出しを要請したような事実は後学のため明らかにしておくことも必要なではないか、と思っている。
 
 


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