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相澤英之 のメッセージ 「地声寸言」 |
2015.05.29リリース |
第二百七回 <スローガン> |
選挙はよく総力戦だと言われる。十回の選挙を斗って来て、全くその通りだと思う。米国の大統領選は選挙資金の集め方できまるとも言われている。新聞紙上で知る程度であるが、日本とはケタが違い、とんでもない巨額の金が使われている。使うからには集めなければならない。
年次は忘れたが、米国の大統領選を見学に行ったことがある。場所はニューオリンズであった。 われわれは自民党の有志議員十数名であった。暑い夏のこととて、上衣を着ているのも辛かったが、とにかく、屋根付野球場のような会場の周辺は全米各地から集まって来たバスで埋まっていた。 会場は、開会式の儀礼で一杯の人である。五万人は集まっていると聞いた。会は議論をする場ではない。ただ、雰囲気をもりあげて行く、いわばお祭り場で、高い屋根に向って絶えず花火が打ち上げられて行く。危くないのか、と気にするのは、われわれお上りさん達である。 聞けば、日程四、五日で全米から集まって来た人達の多くは、開会式と閉会式に出席し、あとは、ヒューストンの宇宙研究所へ出かけて巨大ロケットを見たり、観光名所を見物したりするのだ、と言う。もっとも、われわれもそれらしく行動したから、中間の行事は余り見なかった。 さなきだに派出な恰好をしている選挙民も多く、米国において大統領選は本当に国を挙げての行事であることだけは、雰囲気で知ることができた。それは一つの収穫であった。 われわれが見学したのは共和党の大会であった。私は、このような大きな選挙にはいかにスローガンが大切であるか、を知った。長ったらしい説明文は読んでくれない。読む人があっても、頭に残らない。寸鉄人を刺すがごとき、いいスローガンを見つけることが大事である。 「宮さん、宮さん、お馬の前で、キラキラするのは何じゃいなトコトンヤレ トンヤレヤあれは朝敵征伐せよとの錦の卸旗ぢゃ知らないか」トコトンヤレ トンヤレナ」 これは、幕末に鳥羽伏伏見の戦で幕府軍に勝った官軍が東京に逃げ歸った慶喜将軍を追って東海道を攻め上って来た時にいわゆる錦旗をひらめかせながら唱った歌である。 今の子供たちは余り聞いたことはないかもしれないが、われわれは小学生の頃からよく聞かされていた。 たかが歌と言うなかれ。錦旗にははむかう賊軍と言われたのが、何よりも幕府軍の戦意を喪失せ、日より見の各藩を政府軍に恭順させる原因となった、と言われているではないか。 スローガンである。錦の御旗は、たしかに何よりも官軍の力となったことと思う。 それにつけても、今次太平洋戦争の際にもっといいスローガンはなかったか、と惜しよれる。 「五族協和」は満洲国の範囲にとどまって狭小であった。「大東亜」は悪くなかったが、「八鉱一宇」は日本に従属を迫るようでまずかった。 それというのも、何故この戦をしなければならなかったか、について、よく周辺の人々(敢て国とは言われない)の心に訴えるものがあったのだろうか。 かつての白人植民地の人々に勇気を与え、独立の気運を少なくとも促進せしめる大きな効果があった、と思えるだけに、太平洋戦争の意義はあったことは、結果論ではあったかも知れないが、かつての植民地の人々も認めているだけに惜しまれるのである。 |