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相澤英之 のメッセージ 「地声寸言」 |
2015.04.20リリース |
第二百二回 <地方自治体の限界> |
少々荒っぽい議論をすることを許していただきたい。
表題の件である。 何でも可でも地方自治がいいような主張を時々見る。が果たしてそうなのか、という疑問なのである。 実際あった例である。農地の転用についてはいろいろやかましい制限がついている。昭和三十年代米の過剰が問題となって、田の不耕作又は作物への転作が要請されて以来、農地転用はもっと緩和されるべきものであり、緩和されて然るべきものであったにも拘わらず、地方の現場では、相変わらず農業委員会は理屈なしでやかましいことを言っていたし、又、制度そのものを根本的に見直しをするという情勢にはなっていなかった。 ある県としておこう。国道を改修する大きな計画に附随して、いくつかの施設が移転せざるおえなくなった。その中に一つの自動車教習所があった。それがまるまる新しい国道のルートにぶち当るからであった。教習所は移転を反対したわけではない。逆に移転を機にそれまで三ヘクタールしかなくて、も少し練習場の面積を広げたがっていた。その宿願を実現する好機と移転先を探したら十ヘクタールの好適な土地が見つかったので、早速そこへ移転をすることとし、農地転用の申請を出した。 当時二ヘクタール以上の農地転用は国との協議を必要とする。地方の農地局は農地の転用に異存がなかったが、県の農政部の担当官が転用地が農振地域であることを理由にして、頑として応じない。何度話しても反対だと言う。もし強行するなら、私の首を切ってから実行して欲しいと言う。 私は、そんな担当官は辞めさせたらどうか、と再三言ったが、県はもて余したまゝにしていた。 農林省からも言って貰ったが、ダメであった。三年かかつてやっと許可に漕ぎつけたが、今度は、現在の敷地三ヘクタール相当の転用は認めるが、それ以上ダメだと言う。運輸省の出先は教習所はできたら四〇〇メートルの直線コースがとれた方がいい、というので一〇ヘクタール転用の申請を繰り返したが、やっと五ヘクタールまでならいい、と言う。県が金を出して買うのではない、田の所有者も買却を希望している、いいではないか、と言ってもきかない、結局五ヘクタールの転用で折り合った、ということである。 さて、こういう経緯を通じて本当にその他方の担当官は困ったものだと思わざるをえなくなった。 もう書かないが、まだまだ農地転用に関しては、このいう例をいくつも聞いている。農地転用など国の農地事務当局が担当していたら、とっくの昔にかたずいている、と思うことがいくつもある。 形式的に地方自治を立て過ぎる弊害ではないか、と思っている。 一例を挙げよう。地方団体の住民税は標準税率と最高税率とが定められている。さて、隣り合う市町村で住民税率が違うことが起りうるわけであるし、起きてもいいようになっている。しかし、そうした場合、高い方の住民税税率を定められている市町村の住民はなかなか納得しない。何か大きな工場などがあって、多額の固定資産税などの入ってくる市町村は住民税率を引き下げることができるから、そうしたい。かつては、住民税を0にしたいと自治庁に申し出て、反対された過去の例も知っている。 地方自治だから、そういう住民税率に差等があっても一向差し支えがないと思うが、現実には、いろいろ反対論がある。 狭い国である上に、どうみても地方自治体の数が多過ぎる感はいなめない。 道州制については随分ながいことかかつて議論が繰り返されて来た。道州制も反対ではない。 いずれにしても、このまゝの姿で地方自治だけを強調して行くのは賛成ではない。根本的な検討と改革を強く要望する。 |