back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2014.04.01リリース

第百七十六回 <集団的自衛権>
 前から議論されている問題ではあるが、最近集団的自衛権について明文化し、その権利を法的に認めるとともにその行使について規制を明らかにしようとする動きが顕者になって来た。安倍総理もその法的明文化を実現したいと意欲的となっているが、自民党内には一部この権利を認めるべきではないという意見も出ている。
 言うまでもなく、日本国憲法第九条は次のように規定している。
 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 二 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」。
 この憲法解釈で、政府は、国際法上、集団的自衛権の権利は保有するが、憲法上行使できないという立場をとっていた。
 すなわち、政府は、日本が自衛権を発動する要件として、@我が国に対する急迫不正の侵害A排除するのに他に適当な手段がないB必要最小限の武力行使にとどめる―の三つが必要としており、集団的自衛権は、@の「我が国への急迫不正の侵害」がないため、行使はできないという見解であった。
 然し、同盟を結んでいる米国などが他国に攻撃された場合も、日本は何も手助けが出来ない、というのも妥当でない、と考えられるので、集団的自衛権が発動できるように法改正をするか、従素の法解釈を改正するか、ということになってきたのである。
 そもそも、わが国も加盟している国連の憲章第二条四項で全ての加盟国に対して、「武力による威嚇」や「武力行使」を「慎まなければならない」と禁じ、その上で、侵略行為などに対して、交渉などの平和的手段や、加盟国による経済制裁などで解決が難しい場合には、国連安全保障理事会がその解決に、兵力を用いることを決定できると定めた(四二条)。
 だが、武力攻撃を受けた国は、この国連による集団安全保障が機能するまでの間も、個別的自衛権と集団的自衛権を「固有の権利」として行使できると、五一条で明記した。
 そこで問題は、集団的自衛権についてである。
 自衛権の行使の要件として、侵害に対する自衛の必要があり、他に侵害を排除する手段がないこと、自衛の行為が侵害の行為とかけ離れた内容ではないことが定められているが、集団的自衛権の行使については、更に被害を受けた国が攻撃を受けた事実を宣言すること、被害国が支援を要請することが条件になるとしている。
 いずれにしても、集団的自衛権の行使を認めるには、憲法自体の改正か、個別自衛権の拡大解釈が必要となるのではないか、と言われている。どちらも容易ではないが、必要な行動をとれるように法的な準備を整えておくことは必要だと思っている。
 
 


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