back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2014.03.04リリース

第百七十二回 <タバコ改革>
 この間からタバコについていろいろなことを考えていた。契機は定期のドック入りで、喫煙の痕跡があって肺気腫のおそれがあると言われたことである。
 昔は、旧制高校に入学すると酒タバコは許されると思われていた。もっとも、一浪、二浪がザラにいたので、満二十歳を超えて入学という人も少なくなかった。
 私も早速酒タバコを始めた一人であった。よく、美味しくはないが、恰好をつけるためにタバコを始めたという人のことを聞いたが、私はタバコでむせるということもなく、最初から、おいしいと思う方だった。
 両切りのピースの缶を切って香りをかぐ。空いた缶を壁に並べていく。寮の自習室から紫煙の消えることはなかった。大学を出て入った軍隊でも、ちょっと休憩と言えばタバコであった。安いからタバコを吸っていた。
 三年間のソ連抑留期間も将校は一日十五本の配給があった。マホルカというタバコの粉を新聞紙の切れ端で巻いて吸うこともあったし、お茶の出し殻を干してタバコの代用としたこともあった。煙が出れば何でもよかった。
 復員、大蔵省に復職後は、主計局での予算査定の仕事に打ち込んでいたし、タバコを手放したことはなかった。
 予算の最終段階では固形物が喉を通らなくて、酒五、六合、牛乳五、六本、卵五、六個が毎日の食料で、タバコはあらかた百二、三十本は吸っていた。
 十日に及ぶ最後の折衝を終え、徹夜作業もなくなると、さぁ飲もうということになる。ある晩酔ってタクシーで帰宅する途中、急に苦しくなった。今でいう心房細動である。車から転がり出て、救急車を呼び病院に直行した。不思議なもので先生の顔を見たら、ピタリと脈拍も正常になった。先生がいろいろ尋ねる。ともあれ、酒とたばこを減らすことですなと言うので、私は「それは何べんもやってみたけれど駄目だったので、どうせならどっちかをやめます。酒は百薬の長というが、タバコは百害あって一利なし、思い切って煙草を止めましょう」と口走った。
 私も男だ、と思って、それからピタッとタバコをやめて、今日に至っている。
 米国は禁酒法を実施して、結局失敗している。こういうものは法令で縛るよりも、自然と実現されるように仕向ける方がよい。それは思い切った値上げである。値上げ大賛成。思い切って高くし、どうしても吸いたい人には吸わせたらいい。財政収入はかつてのニューヨーク市の値上げ一挙に十倍という例を見ても、当面増収となる。
 日本も思い切って十倍に値上げしたらいい。タバコ耕作、製造、販売も全部民間に委託する代わりに、目の覚めるように高い税金を課するのである。
 この機会にぜひタバコの制度について根本的な検討をお願いしたい。余ったタバコは外国へ売ったらいい。勝手なことを考えると言われようが、外国人の健康まで心配することはない。その国の国民が考えればいいことではないか。
 
 


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