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相沢英之 のメッセージ 「地声寸言」 |
2012.08.09リリース |
第百二十八回 <市町村の在り方> |
地方自治、とくに市町村の在り方について大上段の議論は、私の任でもないので、ただ衆議院議員として三十年近く仕事をしていた間に得た感慨をいくつか書いてみたいと思う。
第一は市町村の数である。 明治の初めは七万余あったと言われる町や村は数次にわたり合併が促進され、昭和三十一年の新市町村合併促進法によって三千数百となり、平成十六年の合併促進法で約千七百に減ったと承知している。 私は、もっと市町村の数を減らしてもいいのではないか、と思っている。と言うのは、合併については、実質的に府県の指導などがあったと思うが、合併に熱心ではなかった府県の首長もあり、又、市町村長自体、様々な理由、例えば、歴史的に知られている名称を残したい、どうも隣りの町とは昔から利害が対立している、大きな市と合併すると飲み込まれて了って、冷や飯を食わされる懼れがある、などの理由で、どうしても合併に踏み切れないところも少なくなかった、と思う。又、そのような内情を抱えて合併しても、しこりが残るばかりである、といったこともあったと思う。 しかし、将来道州制度まで持って行くならば勿論のこと、そうでないにしても、小さい町村をそのままの姿で残しておくことは、どう見ても難しい、何よりも先ず財政面で成り立たなくなる。 人口五、六千の町に五〇〇人以上も入る公民館のホールを抱えて、月にせいぜい二、三日程度の使用で、町にとっては大きな赤字の一因となっている所がある。これは、隣りの町がつくるなら、俺たちの町も一つ、といったような競争がかつてあちこちで見られた名残である。合併でいくらか解消されたが、建っているものは壊せない。 そういう施設を建てることが、てっ取り早く市町村長の働きを示す材料となっていたのであるから、起債で認められれば、是非やりたい、ということになっていた。又、建てれば、地方交付税の算定にあたって経費の一部を基準財政需要額に算入され、交付税が増額となる、というメリットもあるが、それでは間に合わない。 私は、市町村の数は、今の四~五分の一ぐらいが適当かと思っている。というのは、道州制にすれば、当然、府県の段階は無くなると思うが、その区域内の市町村の数は一ブロック当り三~四〇が妥当ではないか。もっとも、町村はなくなって、全部市ということにすべきだろう。 第二に市町村間の格差である。 近頃、あらゆる社会生活の面で格差の存在その是正が言われている。私は、ものによって格差は存在しても仕方がない、差支えないと思っている。地方自治体について言えば、先ずその人口の格差がある。そして例えば、住民にとって関心の深い地方税率(住民税・固定資産税など)をとってみても、標準税率はあるものの最高税率の範囲内では市町村で決められるから、格差はある。国民保険の料率も市町村で異なる。 役場の職員の給与水準も異なるし、職員数にも多寡がある。小、中学校の教員の配置や学級編成について国の基準はあるが、実際は必ずしもそれによっていない。公民館は大抵の市町村にあるが、図書館、博物館、美術館などになると一様ではない。 概括して物を言う。例えば、北海道と沖縄とでは、気候が全然違う。田舎の町は劇場とか、何とか、文化的な施設は少なかったり、なかったり、だが空気は良いし生鮮食品に恵まれ外食も安いし、暮し易いが、電車やバスなどの公共交通機関は少ない。 よく、官民格差是正などと、格差是正をやかましく議論をするが、私は、多少の格差はあっても差支えないし、なくせるものでもないと思う。公務員などについて刑法その他法律上も取締りが違うのは、職責を考えた場合当然のことであるが、その代わり、民間のサラリーマンより例えば給与上多少の優遇措置があっても差支えはない、と思う。 なお、ちょっと主題から外れるが一言付け加えると、公務員は選挙活動をしてはならないこととなっているが、国家公務員は違反者は罰せられるが、地方公務員は、違反しても罰せられない、となっているのは、どういう理由によるものか、いささか理解し難い。 第三は公営企業などの存在である。 山間僻地などで、車を持たない老人などのために連絡用のバスを運行するなどはやむを得ないが、市町村の経営する公益事業、例えば、水道、ガス、バス、電気、病院などは、経営の難しい所が多く、赤字の補てんに市町村が苦しんでいるところもある。どうも公営事業は経営者も従業員も経営合理化、効率化の意識に欠けて、経営としては成り立たない所が多いと思う。民間に移譲をして、離島航路の様にどうしても事業を継承して行かなければならないと判定される場合は、然るべき補助を与える方が良いと思っている。国鉄、電々などが、国の企業から民間企業に移って、いかに経営が改革されて、良くなったか、を見れば、いい参考になるのではないか。 |