back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2012.03.07リリース

第百十九回 <プーチン再来>
 ロシア共和国のプーチン首相が投票の過半数を制して大統領に就任することになった。首相―大統領―首相、そして大統領、一期六年としてもう既に十八年、さらに六年が始まり、又さらに次の六年が始まるのかも知れないと言われている。
 私は、戦後三年ロシアに抑留されていた。ラーゲルにいたのだが、時々会う、そして短い会話をするに過ぎない一般、普通のロシア人でさえ、小さい声で革命前のロシアはまだ良かったという。壁に耳あり、障子に目ありといった、何かにおびえたような表情でわれわれにさゝやくのである。貧しい、ろくな食物もないといった大衆の上にツアーと一握りの貴族階級がいた革命前のロシアに代って誕生したのはプロレタリアートと農民の国であった筈だが、相変わらずの貧しい大衆と革命政権の指導者達の独裁、いわば社会主義的帝国主義の世の中。
 ソ連は崩壊した。社会主義体制も足元から崩れた。そして新しく出来上ったのは相変わらず一般大衆とその上の一にぎりの特権階級。とんでもない金持と党及び政府の要人の体制。
 いつまで経ってもこの構造は変らない。いわばそれに馴らされた人々。
 戦後、抑留者団体の代表としてモスクワに毎年のように訪れた私達の前にこの大都会は大きく変容を見せて、今や欧米の大都会と違はない姿であるが、矢張りどこか違う、相貌である。どこが違うのか。何か事があれば、近代的な殺人兵器を手にして容赦なく弾圧を図るかもしれない、独裁国家の組織の漂わせる無気味さであろう。
 プーチンの力はいよいよ明らかにされて長く続くであろうが、独裁者は次々に倒れて行く世界の流れの中にあって、中国、北朝鮮もしかり、一党独裁の体制の変容はロシアと雖も避けることはできない運命であると思っているが、短視眼的な見方であろうか。
 
 


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