back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2011.10.13リリース

第百十四回 <積極財政を>
 この頃新聞を読んでいて思うのは国の財政問題に関して実に勝手な論議が多くて世間の人はただ迷うだけなのではないか、ということである。この文も勝手な論議の一つであるには違いないが。
 世界同時何でも安というような趨勢の中にあって日本だけうまく立ち泳ぐことは難しいかと思うが、といって手を拱いて無策であっていい訳ではない。
 日本の財政状態からして再建を図らなければならないことはわかるにしても、この不況下に徒らに歳出を削減し、増税によって歳入の増を目指すというような方策は不況を一層促進させるだけの効果しかないことにどうして気がつかないのだろうか。
 財務省の人達が財政再建を急ぐ気持はわからないでもない。財務省は伝統的に健全財政を標榜してきている。当り前である。然し、今はその時期ではない。
 東京で事務所の中に鎮座していることが多く、以前のように地方を歩く機会は少ない。それでも、地方へ行くと大都会よりなおひどく景気の悪さを感じざるを得ない。
 私の前の選挙区鳥取県では仕事を幾つか持っているので出かける折もあるが、例えばかつては第一の産業と言われた建設業は、公共事業は六割以上減と言われている。一人当りの国の補助負担事業費はかつて全国一、二番といわれ、それに伴って単独事業もこなしていただけに大へんな打撃である。かつて米子の盛り場朝日町は建設業と農業関係の人々で潤っていただけに、今や火の消えたような淋れ方である。皆生の旅館も軒並苦労している。とくに高級なところほど飲食業は落ち込みが激しい。観光県といわれただけに影響は大きい。
 そればかりではない。かつては安い地価と都会に較べれば低賃金を魅力とし、発達する交通機関に支えられて著しい進出がみられた二次産業も弱電やセンイ関係が多かっただけに衰退が激しく、閉鎖したり、細々維持的な経営に留まっている企業が少なくない。当然それらの工場は多くの従業員を排出する。さなきだに下降線を辿っていた農林水産業は一般需要の減退がこれまた大きく響いている。田畑は荒れ、森林は手入れがなく、船は老朽化するばかり。
 観光も「ゲゲゲの鬼太郎」で湧いていた境港を除いて軒並みダウン。いずれ鬼太郎も飽きられよう。人口の老齢化率は全国でも上位、その上総人口は減る一方。これで元気を出せと言う方が無理ではないか。選挙活動を離れて遠くで見るから余計よくわかる面もあるのである。
 さて、どうすればいいのか。私は躊躇なく、いわゆる財政再建は暫らく待って貰って、景気刺激策をとるべきだと思う。財源は国債発行か、日銀借り入れである。復興債の発行が言われている。結構である。しかし、短兵急にその償還財源を求めて増税を強行しようというのは何としても戴けない。論議は所得、法人、相続、たばこ、消費の各税をふらふら動いているようだが、いずれの税でも増税はダメ、反対である。
 復興債と言っても国債であることに変りはない。日本の国債は外国でも買いの対象となっているのは円高と結びついてよくわからない点もなしとしないが、とにかくまだ発行に問題がないと見られている。しかし、ここで更に多量の国債を発行すれば、軈ては金利の上昇、国債価格の下落を招き、国の財政負担を一層大きくするのではないか。私は、再三、再四、日銀借入れを主張して来た。今もそれが一番良いと思っている。ただ一つの懸念は自民党のいやがらせで法律が通らないことである。
 私は、財政法四条によって公共事業又は出資の財源を日銀借入れに求め、予算総則に借入れの限度を示しておけば、法律改正を回避できる、と思っている。
 歳出の面はやはり波及効果の大きい公共事業、無論災害復興も大きく採り入れて公共事業を拡充し、この際長い間の懸案の新幹線や道路公団や地方の有料道路の建設など材料はいくつも転がっているのではないか。先端科学の研究費を思い切って増額するのもよい。二番でいいなど寝言を言わないで。
 財政再建を緊縮政策に頼ることは、今のままでは木に倚って魚を求むるような愚策である。
 重ねて言う。今は増税の回避、財政支出の増大による積極政策こそ執るべき道である。諸賢如何。
 
 


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