back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2009.03.27リリース

第三十七回 <「企業の政治献金を認めよ」>
 民主党小沢代表の第一秘書が西松建設の違法献金問題事件で逮捕されて、又その企業の政治献金の在り方が議論されるようになった。古くて新しい問題である。
 民主党の一部から、その事件を契機とし、企業の政治献金を全面的に禁止する案が出て いるようである。全同党内にも異論があるし、政府与党は慎重な態度であるが、全面禁止に賛同する気配はない。今後、総選挙の大きな論点となるか、どうかは甚だ疑問であるが、政治資金の問題が与野党の一つの論争の的となることは間違いない。
 企業からの政治献金についての法的規制は戦後幾多の変遷を辿って今日に到っている。現在は言うまでもなく、政治家の政治資金団体に対する企業の献金は禁止である。
 昔から、政治資金を規制する法律はあったが、以前はそれ程窮屈なものではなく、真偽の程は詳らかではないが、昭和四十九年の参議院の選挙の際、自民党の集めた選挙資金が七五億円に対して田中総理の集めた選挙資金は一五〇億円であった、とは、今亡き財界の政治部長・経団連の花村事務総長から聞いた話である。
 例の田中総理がロッキード社から全日空機の機種の採用に関連して五億円を受け取ったとして収賄のかどで逮捕されるという事件がその後おこったが、田中総理にしてみれば、丸紅から政治献金として受け取ったその金は、大した金額だと思っていなかったのではないかと、いう気もする。
 以下は、本稿の目的から外れる話ではあるが、一民間会社の飛行機の機種の選択は総理大臣の職務権限の範囲外であると思う。又、ロッキード社という外国法人から直接受け取った金(もし、そうだとすれば、それだけで政治資金規正法違反)ではなく、日本の法人である丸紅から受け取った政治資金であると主張した方が良かったのではないか、という意見は尤もだと思った。然し、当時実質的な弁護団長である田中角栄氏自身が、どうしても金は何ら受け取っていないと言う線で頑張るという意見であったので、その点が作戦のミスであると言われていた。
 いずれにしても、政治資金にまつわるスキャンダルが繰り返されるなかで、世論の厳しさもあって、企業の政治献金に対する規制は厳しくなる一方で、ついに平成十一年の法改正で企業からの政治資金団体に対する寄付は原則禁止となってしまった。
 個人からの政治資金団体に対する政治資金の寄付は、一定の限度内で、所得税法上損金として認められることになっているが、実際問題として、わが国の場合、個人からの政治資金は殆んど期待されない。たまにあっても、所属する企業が給与でその分を配慮するという、今回民主党の小沢代表に対する政治資金問題ではしなくも露見した方法と同様な方法をとっている場合が少なくないと聞いている。
 従って、一般的に市井の個人に政治資金を大きく仰ぐことはまず不可能であるから、結局、残された方法として政治資金団体に認められるパーテー券の売上げによる収入か、各政治家が事実上収支を握っている政党支部への寄付に頼らざるをえない、これらは、要するに実質各企業からの議員に対する政治資金となって、一息ついている。
 政党の支部から議員の政治資金団体への繰り入れは認められているし、政党の支部も、実際問題としていくらでも設置できるような状態である。
 又、パーテーの開催にしても、理論上は、年に何回でも開くことができる。現に、ある議員は毎月のように朝食会を開き、それをパーテーとし、パーテー券を発行しているという例も耳にしている。
 議員が政治活動を展開すれば、秘書の給与を初めとし事務所費がかかることは明らかである。
 事務所の借料、光熱水料、旅費、通信費、交通費など、活動すればする程かかる経費は本当にバカにならない。要るものは要るのだから、どうしても、それを調達しなければならない。となれば、法令の許す範囲内においてあらゆる手を駆使することになるのである。
 そもそも政治資金の規制が必要なことは、法律、条例の差こそあれ立法機関の議員の行動が政治献金の有無多寡によって歪められないようにするためと考えてよいであろう。野放図にすれば、たしかにその危険はあるから、規制する意味はある。
 しかし、現在のような規制の仕方がいいとは思われない。規制の網を潜り抜けようとする。西松建設の献金もその一例であるが、これが唯一の例外ではないことは、皆承知していることである。
 そこで、私は提案する。政治資金団体に対する企業の献金を一定の制限のもとに認める代わり、その凡ての明細を明らかにする。パーテー券についても同様である。
 国民は、その政治資金の収支を見ることによって、議員と企業との関係を読みとることができるし、勿論批判することも可能になる。
 政治資金団体間の資金の移動は認めない。これを認めると政治資金の流れが不明確になる。支出は一円以上領収書を添えて明細を示すというようなことは止めて、一件、例えば五万円以上の明細を示すとともに、人件費についても、受け取った人の姓名、金額も明らかにする。
 一人の議員については、政治資金団体は一ケにする。政党支部は、各政党につき、各行 政機関単位に一ヶまでとする。
 要するに、なまじ実体が見えないような形にして企業政治資金を認めることは止めて、企業献金を正々堂々と認めるとともにその実態を明らかにすることによって国民の批判を浴びることが可能となるようにしたら良いと考えるが、読者諸賢いかに思われるか。
 
 


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