back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2009.01.27リリース

第三十ニ回 <「鬼っ子・定額給付金」>
 世の中のこと、どうも回り持ちだということを近頃とみに感じるようになった。
 サブプライム問題に端を発した米国の、そして世界の金融不安が景気の大変な後退に繋って行ったが、考えるまでもなく、こういう経済の大きな波動は過去に何回もあった。
 百年に一度の出来事だとも言われているが、仮に今回のがそうだとしても、似たようなことは何回もあって、何年か経ったら必ず回復をして来た。
 だから、今回の出来事もほっておいてもいいという結論になるのではなく、いずれ回復するだろうにしても、盡せるだけの手段は盡して不況の克服を考えなければならない。
 五〇〇人ものホームレスを収容し、暖かい一夜を与えるために厚労省も異例の即時対応の措置をとっていたようであるが、その程度のことは、マスコミ受けはしても、本質的にはそう大したことではない。もっと大事なことは、米国のように思い切った手だてを講じて、早急に不況を克服し、雇用を確保することである。
 発足早々の麻生内閣も外目には必死で、あらゆる対策を考究し、次々に実施に移しているか、に見えるが、まだ著しい効果は現れていない。
 もっとも、今のところは定額給付金にしても、批判は山ほど浴びている一方、早く貰いたいと思っている人も沢山いるが、予算も関連法案もまだ成立していない。いわば掛け声だけの状態であるから、少々お待ち願いたいと言うしかない。
 私は、ハッキリ言って定額給付金には賛成したくはない。それだけの金があれば、もっと有効な金の使い方がある筈だという大方の批判に同感である。麻生内閣もその程度のことは充分わかっていたことだろうとは思うが、要は公明党の強い要求に妥協したのだろうと思う。
 丁度十年前の平成十一年に予算総額七千億円で地域振興券が商品券の形で配られたが、当時、経済企画庁は新たな消費に二千億円が回ったと分析していたという。今回は二兆円のうちどれだけが消費に向かうかわからないが、前回よりも使い勝手のよい現金での支給であるから、もっと消費に回るものと思う。
 国立印刷局(紙幣を印刷する独立行政法人)の試算によると二兆円分の一万円札を横に並べると約三万二千キロメートルで、北方領土の択捉島から沖縄・与那島国までを五往復した長さであり、積み上げると高さは二万メートルで成層圏に達するという。
 それはそれとして、困るのは、定額給付金を巡ってあちこちで論争が絶えないことである。
 政府・与党側も良くない。第一、定額給付金を何の目的で支給しようとするのかが必ずしも明らかではない。雇用不安、というより失業者が増大するという事態に対応する緊急措置というなら、全ての国民にバラ撒くようなことは止めて、失業対策となるような使い方、たとえば嘗ての失業対策のような一種の公共事業に使うとか、就職斡旋に費うとかした方がいいと思うし、思い切って生活保護事業を拡充したり、した方がいいと思う。
 野党の反対で成立に汗をかくような法律を作る必要はない。例えば、公共事業費の増額でもいい。バラ撒きは問題だなど言われたって、バラ撒くからこそ一般に潤うのだと反論すればいい。
 定額給付金が、一般の消費刺激の意味があるというなら、所得が多かろうが少なかろうが凡ての人が受け取って使って貰った方が目的に適することになる。
 麻生内閣の閣僚も全員受け取って使いますと言えばいいのに、今のところ(一月九日現在)首相と十七閣僚のうち受け取ると答えた人が十一人、受け取らないが一人、検討または態度を明らかにしない人が六人となっている。
 麻生首相は、まだ予算が成立していないから、何とも言えない。受け取って始めて考える。と九日の衆議院の予算委員会で答えているようであるが、これでは答えになっていない。需要促進という見地からの定額給付金であるならば、麻生首相以下全閣僚一致して受け取って使うのが一番いいということにならないのだろうか。数は力である。二兆という額は小さくはない。内需をいくらか押し上げる効果は充分もっている。
 もっとも、前行革大臣の渡辺議員は、早く解散せよ、定額給付金は中止せよ、要求が通らなければ離党すると息まいているようであるが、この人の言うことも筋が通らない。解散で早く議席を失いたいなら、即時辞職したらいいし、第一離党したら定額給付金の支給を阻止できるとでも思っているのであろうか。
 そう言えば、父君もかって離党すると言明したが、ついてくる人が二、三人しかいなかったので見合わせる、といった事件があった。もっともあの時は、確か、後に続いてくる人を信じて先兵で離党した人も何人かいた筈ではなかったか。DNAはおそろしい。
 いずれにしても、定額給付金についても、決定発表する前に充分問題点を煮つめて検討し、趣旨を明らかにし、決定発表したら、野党がぐずぐず言ったからと言って、躊躇することなく、つっ走るぐらいの勢いが必要と思うが、読者諸賢如何に思われるか。(追記 渡辺議員は一月十三日離党した)
 
 


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