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相沢英之 のメッセージ 「地声寸言」 |
2008.05.29 リリース |
第八回 <片肺内閣> |
大変失礼な表現をしたようにも思うが、又、何だか一番ぴったりしたネーミングではないか、と思ったりしている。
何と言っても、昨年の参議院議員の選挙で与党が過半数を失ったことが最大の原因であると思う。予算や条約は衆議院の絶対優位が認められているから、時間さえかければ何とかなるからまアいいとして、法律案が参議院で否決されれば、衆議院で三分の二の多数で再議決をするという手が残されているにしても、そう再々使うわけには参らぬ。制度としては可能であるが、実際問題として何回も使えば、必ず世論のブーイングを招く。独裁国家ではない悲しさ、それを無理して事を運ぶわけにはゆかないのである。 法律案はまだいい。法律案の数を極力纏めて少なくし、三分の二再議決の手を使う方法もあるが、同意人事に到っては、参議院で否決されれば、最早どうともならないことは、日銀総裁、副総裁の人事案件で明らかにされた。従来、閣意人事でこんなことになるとは考えられもしなかった。 国会同意人事について、法律案と類似の衆議院優位の法制に変えようという動きがあるようだが、それとても法律改正がスムーズに進められるという保証は全くないし、仮に可能であるとしても、今日、明日に間に合うものではない。 又、これから法案の処理などでニッチもサッチも行かなくなり、参議院での首相の問責決議を受けて衆議院を解散し、総選挙で国民に信を問うことは考えられるが、さて、現在のような与党三分の二の絶対優位の体制を維持することは極めて難しい、否、不可能と見られている限り、解散総選挙は一体どういう意味を持つことになろうか。 もし、仮に、与党の勢力がそれ程減少せず、優位体制が崩れないで済んだとしても、参議院の少数与党の現在が変わるものではない以上、内閣の窮状は何等改善されないことは明らかである。 次の参議院の選挙で与党が少々勝つとしても、過半数を取り戻すことは至難であるから現状の続く限り、ここ数年は少数与党のまゝ進むしかない。 活路があるとすれば、参議院野党を分断し、十数名を野党からひっこ抜いて新党でも結成させ、連合戦線を形成するしか、他に方法はないと思う。無論、それだけ与党側に入党してくれればいいが、いきなりそうもならない。 ところで、さて、次に考えられることは、党首会談で一辺は同意しかけた大連合を頭の片隅に置いて、案件の内容をとことん話し合い、お互いに大乗的見地から譲り合って合意案を作り上げ、成立に持って行くことである。お互いに成熟した政党として、この道を探れれば結構であるが、それを余り進めると、野党の存在意義を薄め、支持基盤を弱めるという難点があることも確かであろう。ここに野党のジレンマがあり限界がある。 アメリカでは、今もなお民主党の予備選挙続行中でオバマとクリントンという二候補の争いは決着をみていないが、そのどちらが勝つにしても、民主、共和両党の政策の差は現存しているように見える。わが国の場合、与野党でどれだけ政策が根本的に異なるのか、明らかでない。どうも五十五年体制時の、自民と社会の二大政党の政策の差というほどのものを感じないのである。政策的には、野党の与党化とでも言えようか。 こうなると、右にでも、左にでも風は一層吹き易くなる。だから、衆議院で自民党が大勝したかとみれば、次の参議院選挙では民主党が大躍進をするのである。つまり、国民は、政治に対して、昔程大きな関心を持っていないのではないか。どっちが勝とうが、自分達の会社の営業や家族の生活に大した影響がないと感じているのではないか。 国と地方の関係にしても、財政と金融の関わり合いにしても、よくわからないし、又、それがどう転んでも、自分たちには明日は明日の風が吹くぐらいと思っているのではないか。 本当に年金がちゃんと貰えるようになるのだろうか。油はバーレル百ドルどころか二百ドルを目指しているというし、アメリカからはBSEの牛の肉が、中国からは毒入りのギョーザが入ってくるし、消費税一〇%も間近かだというし、一体これから日本の経済や自分達の生活がどうなって行くのか、誰も確信を持てないような情勢になっているのではないか。 それに対して、一体政府はどういう風に考え、どういうことをしようとしているのか、と聞いても、そもそも思い切ったことは何もできない体制にある。片肺内閣と呼びたくなるのは、仕方がないではないか。 といって、今更独裁政治の台頭を望んでいるわけではない。飽くまでも民主政治の枠内での解決しかない。 何だか、無責任な意見を並べただけのように思われるのは残念だが、ここは一つわれわれ一人一人が充分にものを考えて、解決案に向けて一歩でも、二歩でも踏み出すしかないと思うが、読者諸賢如何に思われるか。 |