back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2016.06.08リリース

第二百四十五回 <災害対策>
 よく天災は忘れた頃やって来る、という言葉が言われたが、この頃日本では阪神淡路、東日本、熊本と忘れる暇もない程続けて大震災が起きている。
 そもそも日本列島は大袈裟に言えば、火山に乗っているような気がする程、地勢的には天災を受け易い状態にある。
 一般の火災保険は天災による災害は保険事故とはされていない。それで、高い保険料を拂って地震保険に入っているが、加入率は高くなってはいるものの、まだまだ不十分であるし、又、いざ災害に遭った場合、それで充分と言う訳にはいかない。
 阪神淡路の大震災のあと、皆の心得が悪いから地震保険にも入っていないのだ、と言ってほっておくわけにはいかない、というので、今は故人となったが原田議員などと議員連盟を作って共に天災による被災者の救済に国が乗り出して貰うことにしたのである。
 財政当局としては、公共施設災害の復旧に追われている状態であったので、当時から相当手強い反対があったが、われわれは会を重ねて具体案を練り進めて、議員立法にもって行った。
 勿論建物など個人財産の被害復旧が金額的には大きかったが、個人の私有財産の被害を国の負担で復旧するのには強い反対があった。それで、ともかく当座の災害対策として、さし当って日常生活に必需の炊飯器、ラジオ、テレビ、冷蔵庫などの身の回り品を買い揃える資金の一部として一軒百万円を交付する法案を作った。見舞金として差し上げるので、何を買ったか、どう使ったか、などを報告して貰わなくてもいい、というようにしようとしたが、頭の固い人がいて、そうはいかなかった。所得制限は置かなかった。
 この法律を通すにもかなり困難があったが、議連は超党派のものであったし、何とか成立に漕ぎつけた。
 被害者に対する仮設住宅の貸与については既に法制が調っていたし、建設額、復旧住宅の規模などについては、所管省内にも議論があったが、前例もあり、一応は収まった。さて、個人住宅の復旧に対する補助については、それこそ財政当局を中心とする強い反対意見があった。
 確かに一般の個人住宅に関しては、天災と難も被害復旧の補助をした例はないが、農業に関しては田地田畑、灌漑施設など、個人資産の被害復旧についても多額の(実質災害復旧費の九割以上)の補助金も交付されている。
 そこで、若し、個人住宅災害について被害復旧費を補助したら、商店、商店街のアーケードなどの施設にも被害復旧費の補助をしなければならなくなって、とても、財政負担に耐えないという強い反対があった。
 こうした議論を無視する訳にはいかなかったが、とくに強く反対をする大蔵省をとにかく説得して個人住宅の被害復旧費の一部を補助することに漕ぎつけたのである。
 次に、復旧費の補助態様である。原形復旧にはとてもならないが、家族の数を基として一定の大きさの建築費の二分の一程度を補助したかったが、財政当局を中心とする反対論も無視することは出来なかった。建築費の半分程度を強く主張していたわれわれも諦らめざるをえない情勢であったので、戸当り補助をせめて五〇〇万円としたかったが、最後に調停役の党幹事長の意見を容れて二〇〇万円で手打ちをせざるをえなかった。後になって戸当り一〇〇万円を追加して、結局戸当り三〇〇万円の補助と相なったのである。
 事終って、われわれには、一部の満足感と一部の不満が残ったが、ともあれ、個人の財産の被害復旧についても国が助成をするという、いわば画期的な制度を作ることが出来たことは本当に良かった、と関係者一同思った。
 
 


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