back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2010.06.24リリース

第七十二回 <「シベリア抑留者法」>
 シベリア抑留者に特別給付金を支給する特別措置法が6月16日衆議院本会議で可決成立した。抑留者、財団法人全国抑留者協会の会長として(以下全抑協という)そのことについて有難く感謝する。
 しかし、役所側の発表の故か、シベリア抑留者に対して長きにわたり自民党政権のもとにおいて、問題として何等真剣に採り上げられていなかったごとき記事が新聞各紙に載せられている点については甚だ不満である。
 この問題に30年余り取り組んで来た全抑協として記事の公平を期して貰いたい思いでから、左記のような文書をマスコミ各紙及び総務大臣その他関係官庁に送付したので、ここの再録し、読者諸賢の賢明なる認識を得たい。
                        記
 旧ソ連抑留者に対する特別給付金を支給する「戦後強制抑留者特別措置法」が6月16日衆議院本会議で可決成立したことは、われわれ抑留者にとって有難いことで感謝いたしております。
 しかし、本件についての記事については、いささか事実に則しない及至は説明不充分の諸点が見られますので、次のように訂正方申し入れる次第です。
 一、政府は昭和31年(1956年)の日ソ共同宣言(日本側代表鳩山一郎首相)の第六項で相互に請求権を相互に放棄することとなっているのですが、われわれ全抑協は、平和条約締結に際しては、この条項を修正し、不法なソ連抑留に関しては抑留間賃金の補償を行うことを旧ソ連(現在はロシア共和国他)に要求し続けて来ました。
 共同宣言がそのまま平和条約となるものでないことは、共同宣言第九項において平和条約が締結された後に歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことになっていますが、日本側はこの二島だけではなく、北方四島を一括日本側に返還することを要求し続けていることからでも明らかであります。
 二、全抑協は旧ソ連に対して賃金の補償要求を続けつつ日本国政府に対しては慰籍事業として諸々の要求を続け次の事項の実現を見ました。
 
 一、昭和61年、ソ連抑留者(生存者)について一人10万円の慰労金、銀盃、書状を贈呈する。
 二、平成17年、ソ連抑留者(生存者)に対し10万円の旅行券を贈呈する。
 三、以上のほか、中央、地方の慰霊碑の建立、慰霊巡拝、資料の保管、展示、語り継ぐ集いの開催等の諸事業を行う。
 
 従って、10万円相当の旅行券の支給だけが従来行われた慰籍事業であるとする記述は明らかに間違っております。
 又、今回成立した特措法は抑留期間に応じて一人25万円から150万円を支給することとされていますが、旧ソ連抑留者は大部分が昭和23年末までに帰還をしているので、大方25万円の支給対象であり、それ以上貰える人は極めて少ないという状況であることも事実として認識していただきたいと思います。
 なお、全抑協の会長としてソ連抑留記「ボルガは遠く」を昨年3月出版いたしましたが、その後半に関係文書を集録いたしておりますので、御参考のためお送りいたします。御一覧下されば幸いです。
 
 平成二十二年六月十七日
                        財団法人全国強制抑留者協会会長    相沢 英之
 
 


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