back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2010.06.23リリース

第七十一回 <「南アフリカ一見」>
 今、南アフリカはワールド・カップサッカーで世界中の注目を集めている。日本は6月14日カメルーンとの第1戦を1‐0で勝って、意気大いに騰るといったところである。
 私が日本南ア友好議員連盟の有志8人の団長として南アに訪れたのは今から17年前で、アパルト・ヘイトの問題で世界の関心が高まっている時であった。鉱山会議所の人達の案内で地底1500メートルの金鉱採掘現場にも行った。1分間800メートルのスピードという日本製のエレヴェーターで地底に着き、水平坑道をトロッコで1キロも走った。切羽では10台もの削岩機が物凄い響音でハッパを仕かける穴を掘っていた。お互いの言葉は全然通じない。坑道に入る前、着いているものはパンツに至るまで一切着換えてゴムの上下の姿で、切羽を出た時は滝のような汗であった。
 坑夫は固辺の各国から働きに来ているものが多く、お互いの言葉が違っているので、作業に必要な言葉だけを予め覚えて貰うようになっていた。坑夫達のキャンプは兵営のような規律で運用されていて、キャンプの中央には何の宗教にも使えるような建物も用意されていた。
 坑夫達は国にいるよりも高い賃金で働き、家族に送金できるので、喜んで働きに着ている、という話であった。
 ボータ外務大臣への表敬訪問は当初の約束を遥かに越えて1時間半にも及んだ。アパルト・ヘイトの問題について、ボータ大臣は、その問題についての外国からの非難を解消するために現在白人だけの国会を三院とし、白人、カラード(白人とブラックとの混血)及びエイシアン(インド人などのアジア人、ただし、日本人は白人扱い)のそれぞれの代表をもって構成することにする、ただし、重要な案件は最終的には白人の院で決定するという趣旨を力を籠めて説明し、三院の建物まで案内してくれた。
 ボータ大臣はこの処置によってアパルト・ヘイトへの非難を交すことができるように語っていたが、私は、この処置によって、カラードとエイシアンはまぁいいとして、全人口の80%を占めるブラックはいよいよ彼等だけが政治から除外されたとして、却って反抗を強めるのではないか、という懸念をもった。
 果して、その翌年カナダのオタワで開かれたIPOの会議で、OECDのメンバー国の会議において問題が採り上げられ、南アのその処置は問題の解決には役に立たず、却ってアパルト・ヘイト解消への運動を煽ったのではないか、という報告が出されていた。
 8割のブラックの力は大きい。マンデラ大統領が実現するにはそれ程の時間がかからなかったと思う。
 南アの街は、私どの訪れたヨハネスブルグにしてもケイブタウンにしてもヨーロッパの近代都市と全く変わらない美しさであって、ワインがおいしかった。こういうワインを何故日本には入って来ないのか、と思ったが、日本はバカ正直で、南アでのゴルフ大会に青木の参加を認めなかった程であった。他の国は建前は建前として、他のことは別と言わんばかりに経済面でも何でもおかまいなく進出して来ているという。そのくせ、南アに入るトヨタの車はベンツより遥かに多く、南アの輸入車の半分以上を占めているという。ただし、ヨーロッパ経由と聞いたし、高級車は残念だがベンツということになっているという。
 世界陸連の大会はアフリカの運動会と思われる程ブラックの運動力はけた外れに強いが、その力がサッカーだけでなく経済においても発揮される日が近づいているのであろうか。刮目していたい。
 
 


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